原因と結果の関係を明らかにすることで発展してきた科学技術は現代文明を構築し人々の生活水準を著しく向上させた。現代人には物事を因果関係で捉える発想(因果律)が身についていて、科学的な思考は大学教育でも重視されている。日常生活において、何か問題や出来事が起きたときに、最初に発する疑問は「なぜこういうことが起きたのだろう?」であろう。理由がわからないということは不安なのだ。それゆえ、大きな事件が発生した場合、ワイドショーなどでは、その分野の専門家といわれる人が登場して、理由や原因をコメントし、人々はそれらを見て(それが正しい見識でなかったとしても)納得し安心するようなことが毎日繰り返されている。
しかし、全ての事象を単純な因果関係で説明するのは困難で、むしろ説明できない事柄の方が多いのではないだろうか。なぜ自分は生まれてきたのか、なぜ自分はこういう出来事に遭遇したのか、な ぜこの人と出会ったのかなど、世界はむしろ不思議な出会いや出来事に満ちている。因果を超えた不思議体験の極端な例が「直感」「予感」「予知」「共時性(意味のある偶然の一致)」などであるが、実は多くの人がこれら不思議な体験をしている。
この不思議な現象の解明に、現在、最先端の量子物理学の「ゼロ点場仮説」が迫ろうとしている。量子物理学が示すものは、私たちが物質として認識しているものは錯覚に過ぎず、全てはエネルギーであり波動であるという概念である。そして宇宙のビッグバン以来、宇宙で起こったことの全ては波動情報として記憶され、永遠に残るという。人が何を思い、どう行動したかの一切も、である。古来より語られている「アカシックレコード」や聖書の「命の書」が示すのは、この全てを記憶する次元のことを指すのかもしれない。不思議な偶然の一致の現象は、波動が共振するから生じるのかもしれない。 因果律に基づく科学は、部分を取り出し分析するプロセスを伴うが、量子物理学が示す世界は、すべてがひとつに繋がり関係性をもっていることを明らかにする。私たちは、従来の物の見方だけにとらわれないでいたいと思う。